素材に触れる -欅・けやき-

先日、みがき隊講師の太田先生からご縁を頂き、アトリエに樹齢200年を超える欅(ケヤキ)の机がやってきました。
厚さ7センチ、巾は90センチ、長さが2m40センチという立派な一枚板の机は、一度に6人が掛けられる大きさです。

欅は北海道を除く全国に分布するニレ科の広葉樹です。
春の芽吹きから夏は陰影、秋の紅葉に冬木立と、四季折々の美しい姿が人々の心の拠り所となり、神社や公園、街路樹などに見る日本を代表する木として昔から尊ばれてきました。

また、材質が硬く密実で長年腐朽しないことから材としての有用性も高く、昔から寺社や城郭の建築材に使われ、京都・清水寺の舞台を支える柱は、長さ12mを超える約80本の欅が使われているそうです。

さらに、摩耗に強く美しい杢目を持つことから、太鼓の胴や家具などの日常品に至るまで広く使われ、使用年数が重なるほど美しい艶が出てきます。

 こうした欅の特性は、机の搬入時にすぐに実感しました。見た目の立派さ通り密実で、とにかく重い…
大人4人がかりで、やっとの事でアトリエに運び込みました。

搬入後、机の天板は、少しささくれた部分にペーパーを掛けながら、みがき隊のワークショップでも使われる「荏胡麻の油」で磨きあげます。
 すると、どうでしょう。美しい杢目が浮き上がってくるではないですか。
この机は、すでに二十年程使用されてきたそうですが、天板のシミや傷さえもそうした歴史を感じます。

太田先生は、創造域の仕事をする者は、エネルギーを持つ素材に触れながら仕事をするべきだと仰います。確かに、今まで何の疑問も持たずプリントされたメラミン板の机で作業をしていましたが、机が入れ替わり、暖かな木肌に触れているだけで何か力を得る感覚を実感します。

この度の記念として机裏に、太田先生より筆を入れて頂きました。
道元禅師の「清白家風梅雪月(せいはくのかふうばいせつげつ)」
私達の家風は梅の花のように白く芳しく、雪のように白く清く 月のように白く淡い

白梅が咲き誇る季節に欅の机を迎え、あらためて自らを白く、初心に立ち返り、机も心もみがきをかけていきたいと思います。

しかし、春の慌ただしさに、今のところなかなかこの机の前に座ることができないのですが…