先日、東京都文京区馬込にある六義園を見学する機会がありました。
この日本庭園は、1695年に五代将軍の徳川綱吉から馬込の地を付与された柳澤吉保が、7年をかけて造園した庭で、明治には三菱創設者の岩崎弥太郎の所有へと移り、昭和13年に東京都に寄付されて以降は公開庭園となって、昭和28年には国の特別名勝に指定されました。
築山を囲む大きな池水は、全体としては小判の形のように見えますが、実際に池水沿いを歩いてみると、緩やかなカーブで多様に入り組んだ形であることに気付きます。また、池水とその周辺の樹木や園路、建築といった緑地は調和して一体となっているように感じました。(MAP)
このように、築山、池水、樹木、園路、建築など、繋がりをもって四方へ広がる回遊式の庭園は、多様な場所の重なりから、そこに生まれる景観や雰囲気を体感できる場所だと思いました。
文化財庭園を巡る時、大切に感じることの1つは、「植木職人は何をどのように見せようとしているのか」という点です。
そのような視点で園内に歩みを進めると、池水手前では植栽を低くして池水を大きく見せていたり、渡月橋の周りでも左右に異なる景観を対比させる剪定がなされていたり・・・と、私なりに思いを巡らせながら六義園を見ることができました。
植木職人が何をどのように見せるのかを考える際、その拠り所となるものの1つに「創建時の風景」があると思っています。これは建築にも通じる点で、創建時の風景は先人の崇高な思い、高い見識や技術に基づいて造られたものだと感じています。そのため、後世の私たちは今、庭園や建築という文化財に身を置くことで、先人に思いを馳せることができると思っています。
時代の変遷と共に、建築は老朽化して庭園は繁茂する中で、創建時の風景の継承は今の時代を生きる私たちの手によって進める他はありません。
そのため、私たちは文化財の価値を学び、美への感性を研ぎ澄まし、正しい見識と技術を習得することに日常から努めることが大事だと感じています。
名建築・みがき隊のワークショップでは、文化財保護審議委員の太田先生から、文化財を復元することの大切さを学び、特に木造建築の各材料に合わせた正しい手入れの実践についてご指導を頂いています。
今後は改めて、名建築・みがき隊の一員として、文化財の継承という大きな目的を持って、さらに仲間を増やして実践していきたいと思っています。
(写真上:正面玄関)
(写真下:心泉亭付近から、中の島を囲む大泉水を見る)