炎のかまくら

先日、みがき隊講師の太田先生にお声かけを頂き、富士宮市の陶芸家 佐々木泰男さんの窯出しにご一緒してきました。五月晴れの早朝、秀麗な富士の姿を眺めながら車は新東名高速を流れ、新清水インターを出て脇道から山道を進みます。

 

道中、山深い谷間に新東名の橋脚が忽然と現れ、まるでご神木の如くそそり立っている姿が印象的でした。
しばらくすると集落に出て、その奥に佐々木さんのアトリエがありました。

登窯を前に、陶芸家の佐々木さんをはじめ、集まった皆さんとご挨拶を交わした後、窯出しの作業が始まりました。
窯出しがはじめての私は、皆さんの動きを見様見真似で、追いながら作業に加わります。

窯の中から次々に出される作品などを迅速に運び出しますが、思いの籠った作品を丁寧に扱うため、とても神経を使う作業でした。

さらに、窯の内部は50℃以上とまだ熱く、狭い空間で続く中腰の作業は、なかなか大変でした。今回、私は作品をつくっていませんでしたが、黙々と作業に取り組まれる皆さんの姿を通して、創造の楽しみを共通されているのだと感じました。
そして、窯から自分たちの作品が生み出されるたびに、両手に抱いた器を笑顔で愛しむ姿を、微笑ましく感じました。

  

全ての作品を出し終え、奥深い窯の内部をしばらく眺めていると、郷里の新潟で幼少期に遊んだ雪の「かまくら」を思い出しました。
かまくらには水神様を祀りますが、こちらの窯は火の神様で、雪と炎は対局ですが、原体験とはこのようにして体に染み込んでいるのだと感じました。

そして、それぞれの価値観や人生観を写し、炎によって命を宿した数百点の作品を前に、皆さんからも様々なお話しを聞く事ができ、心にも体にも刺激的な一日でした。

お声かけ頂いた太田先生、そして佐々木さんはじめ皆様、貴重な体験をありがとうございました。

創造の楽しさ知りて語りあう 富士の御胸に集いし窯人