洋と和の調和

先日、国指定名勝の旧古河庭園を訪れ、庭内に建つ旧古河邸(ジョサイア・コンドル設計)を拝観する機会がありました。旧古河邸は「洋と和の調和」を掲げ、大正6年(1917)に竣工した重厚な煉瓦造の邸宅です。1階を洋風建築(迎賓の場)、2階を和風建築(生活の場)として、眼下に広がる煌びやかな洋風庭園によって存在感を際立たせていました。

外観から1階、2階ロビーまでは洋風建築そのものでしたが、2階には洋室と和室が混在する内部空間が広がっていました。洋と和の調和という視点で2階を巡る中で、印象的な体験が2つありました。

①板の間
多様な板の間が、開戸(洋室)と襖(和室)の間に点在していました。大人が大の字で寝転べる広い板の間から、小さな子供が一人入れる狭い板の間まで。板の間の形状や広さは1つひとつ異なりますが、コンドルは洋と和の間合いを計り、人間の行為をゆるやかに繋げようと、板の間を干渉空間と見立てて造られたのだと感じました。

②窓
30畳程の書院造の座敷に入ると、比較的大きな腰窓が高い位置にあるのが気になりました。ガイドさんは、コンドルは洋風の外観意匠を優先して、窓の大きさや形状、高さを各階で揃えたため、和風の内観ではそう感じやすいと語られました。豪壮な構造の洋風と緻密な意匠の和風が重なり合うことは、双方の建築的特色を際立たせ、見たこともない空間を体感できることに繋がると感じました。

①②を通して、洋と和という異種の文化の調和を具現化する大変さと建築的価値を感じることができたと思っています。建築は文化や用途、建材、環境など、異種のものを複合させて造られる一つの芸術であると感じました。それらをどのような設計手法で具現化し調和させているかが名建築の見所の一つであり、そこから先人の設計時の想いを想像できると思っています。

「どんな想いが込められた空間だろうか」「どんなに苦慮されて設計されただろうか」などと思いを馳せながら名建築を巡ることは、先人の思想哲学に触れて名建築の価値を知ることに繋がると思いました。

今年も名建築・みがき隊ワークショップを定期的に開催する予定です。今回のような建築探訪の視点をより意識しながら、名建築を大事に磨いていきたいと考えています。

※内観は撮影禁止の為、外観のみ掲載

(写真上:正面玄関)
(写真下:旧古河邸パンフレット ※事前申込制)

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旧古河邸(大谷美術館)

東京都北区西ヶ原1-27-39
大正6年(1917)竣工
平成18年(2006)国の名勝指定
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記事投稿:名建築・みがき隊チーフ 今野貴広