木の構造と表情

古都奈良にある世界遺産・唐招提寺に行ってきました。

唐招提寺の南大門は屋根を低く抑えられて、緑と適度な距離を保ちながら街並に溶け込んでいました。貫禄ではなく、親しみを感じる雰囲気がそこには漂っていました。

一列に並んだ6本の木の柱には、大気や風雨に晒され耐え忍んできた跡、拭き掃除の跡、拝観者達が残した手垢の跡などが混在して、趣のある多様な表情が作られていました。時代と共に様相が変化していく建築の所以が、この様々な形跡にあるのではと感じました。

 

そこから奥へ進むと、金堂が南大門と正対して待ち構えていました。近づいて下から深い軒を覗き込んで柱上部を見ると、外側の大きな荷重を柱へ伝える木の組物が目に止まりました。暫し立ち止まり、その美しい構造体に酔い痴れてしまいました。

先人達は1つ1つの木に新たな役割を与えて仕組みを作り、その美しい姿をどこまでも追求され、作り上げている点に本当に感心させられます。

みがき隊は名建築の学びを深めるために、講師の太田新之介先生より、数百年前に先人達が描かれた木造建築の原図をいくつかお借りしています。奈良来訪後、巻物状の原図を手に取り、広げてみて感じるのは、1本1本の線で表現された太さや力強さ、軽やかさ、曲線美などは、その意を汲んで棟梁によって現物とされている点です。

木の構造は図面で分かりますが、木の表情は現物でしか分かりません。現物を見て、触れて、実感できるみがき隊は、先人達の技術や建築の半生を学ばせて頂く場でもあると考えています。

(写真上:唐招提寺南大門)
(写真中:唐招提寺金堂)
(写真下:数百年前の木造建築の原図)



記事投稿:名建築・みがき隊チーフ 今野貴広