清澄庭園 名石が語るもの

日本庭園協会の創立百周年・記念事業として、清澄庭園の魅力と価値をさぐる連続講演会(清澄庭園再評価プロジェクト)が開催されています。

2月3日、そのプロジェクトを構成する「清澄庭園と名石」(松島 義章 神奈川県立生命の星・地球博物館名誉館員)と題した講演会に参加してきました。

講演では、庭内にある数々の名石の成り立ちや特色を、数百万年単位の時間軸で解説され、壮大な観点に導かれました。中でも、日本各地に産出される石は、日本列島を構成する4枚の大陸プレートによる地体構造に関連している、とのお話しはとても興味深いものでした。

三菱財閥を創業した岩崎家が海運によって、全国各地から名石を集め配した清澄庭園は、いわば一庭に日本の地体構造が表されているとも言える稀有な庭で、その石の大きさも他に類を見ないとの評価でした。

建築の外構では雨落や土間に石が使われ、手水鉢や灯籠、沓脱石などは、その産地や大きさ、形でステイタスを示すなど、建築と庭の接点で石が大切な意味を持って使われます。

今回、名石のガイドブックを手に庭内を巡ると、産地の異なる石が重なりあって場面を構成し、庭全体を形づくっていることがよく分かります。

学術的に貴重な石が集まっているという事だけではなく、その姿は獅子の様に、色や模様は壮大な水の流れの如く、想像力を掻き立てます。建物の周辺や、園路の所々で物言わぬ石に目を配り庭を巡れば、思考や情景が豊かになる事を実感しました。
海運に適した地の利を生かし、全国の石の産地から集めたという史実を確認するため、隅田川からの支流が取り囲む庭園の周りを散策しました。

清澄白河は、情緒ある街並みに新しいカフェやショップが立ち並ぶ、コーヒーの街として知られる下町アートな界隈です。
また、「清州寮」や「旧東京市営店舗向住宅」など昭和初期の面影を残す建物も面白く、歴史ある庭とともに周囲の街並にも興味を惹かれました。
石は水に濡れた、濡れ色が美しいと言われますが、次回は石が美しく映える雨降る日に、あらためて清澄庭園を訪れ、帰りには魅力ある界隈を巡ってみたいと思います。

(写真上 :名石と清澄庭園の景色)
(写真中1:日本列島地体構造図)
(写真中2:清澄庭園の全景)
(写真下 :清澄庭園の雪吊りとスイカイツリー)